SPECIAL COLLABORATION
2019.07.22
  • SPECIAL COLLABORATION
KENJI HIRASAWA × UNITED TOKYO
今回UNITED TOKYOでは平澤賢治氏とコラボレーション企画を実施。同氏のバックグラウンドや今後の展望について伺った。

-写真家として活動するようになった経緯についてお伺いします-
「高校生の頃から、友人たちがつくるロックバンドのライブを撮影するようになりました。最初は使い捨てカメラを使っていましたが、演奏中の一瞬の輝きを逃さぬよう、少しずつ最適な機材に変えていきました。大学になってからも写真への興味を失うことなく、そのまま好きなことを続けて今日にいたります。」


「2003年にニューヨークへ留学した時期からファッション写真に興味を持っていました。ニック・ナイト氏のクリエイティビティに憧れていたので、彼のアシスタントになることを目指してスタジオ勤務後に渡英しました。そうして、実際に彼に会うこともできましたし、プロジェクトにも参加しました。ニックが運営するSHOWstudioでアートディレクターを務めるポール・ヘザリントン氏と交流する中で、アシスタントになる以外の選択肢を検討すること、自身で写真を撮っていけばいいのでは?と勧められました。」


「ニックやポールとの交流、また、ロンドンでの生活を通して、自然とファッションからアートに興味の方向が変わりました。古いものと新しいものが共存する街と、そこに住むひとたちの多様性とクリエイティビティ。美術館やギャラリーが生活に根付くのを体感して、自分が本当にしたいことに気づけました。毎月、新刊が並び、あるいは短いスパンでコレクションが発表されるファッションと、それに携わる人たちの情熱とバイタリティ、刹那的な輝きに本当に魅了されます。ただ、自身の取り組みとしては、消費を前提としない、自分とまっすぐ向き合った表現を模索することにしました。」

-アート写真としてサーモグラフィを使った写真を撮影したきっかけを教えてください-
「始まりは学生時代に遡ります。2004年にサーモグラフィの撮影をスタートしました。当時は慶應義塾大学の環境情報学部でメディアやコミュニケーションについて学んでいました。その中で、リモートセンシングという、衛星から撮影される情報を分析することで、地球で起こる変化や現象を解析するクラスの中で、サーモグラフィを扱いました。カメラを通して他の受講者を映してみたときに、命を可視化できるツールの魅力と、表現の可能性を感じました。熱や体温から無意識のうちに生まれる『共感』や、一視同仁の眼差しをもたらすサーモグラフィは、私の表現に必要な選択でした。」


-制作についてお聞きします。今注目している被写体はありますか?-
「ダンスに興味があります。動物、特に馬を撮影して以来、肉体と魂の肉迫した対象や現象を撮りたいと思うようになりました。2004年から続く『Portraits』というシリーズでは、自分と親しい家族や友人の存在を残すこと、インデックスとして機能するイメージをつくることを心がけていましたが、今は人間の肉体や魂、精神といった非物資的な面に考察を進めています。」



-今後の写真家としての展望、目指していくところについてお聞きします-
「2015年11月、Paris Photoに参加するためパリを訪れていましたが、フェア二日目の夕方に大規模なテロが起こりました。ホテルで待避していたところ、ドイツの新聞社ディー・ツァイトが発行する科学雑誌『ZEIT WISSEN』から作品イメージの提供をしてほしいと依頼がありました。難民問題に揺れるヨーロッパで、市民が「Empathy」について考え、社会として取り組むことを提起する記事の挿絵として、サーモグラフィの《命の肖像》が採用されました。多様な文化や思想を共有し、理解するアプローチの一つとしてアートが機能するとしたら、そこで、「人間的な美」というのを探求して、表現してみたいと考えています。」


-最後に今回のコラボレーションについてお伺いします-
「人間の皮膚の延長である衣服や建築にずっと関心を持っています。UNITED TOKYOは、日本のものづくりにこだわりがあると聞いておりました。この度のコラボレーションを通して、サーモグラフィの鮮やかな色がファブリック上でどのように再現されるか、興味深くみていました。プリントとして出力される作品とは全く異なる発色でしたが、メディウムの特性がわかりよい経験となりました。」

平澤賢治
1982年東京都生まれの写真家。
2006年に慶應義塾大学を卒業後、スタジオ勤務を経て独立、渡英。
ロイヤル・カレッジ・オブ・アートで写真専攻修士課程を修了する。
東京、ロンドンで数々のグループ展に参加するほか、SHOWstudioでも活躍。
2011年、写真集『CELEBRITY』(Bemojake)を発表し、ロンドンのギャラリーKK Outletにて同タイトルの個展を開催。
写真雑誌『Photoworks』、『GUP』の表紙を飾るなど注目を集める。現在は東京とロンドンを拠点に活動する。