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今回「PERSON」でインタビューをお願いしたのは16SSコレクションのコラボレーションアイテムであるオーバーコートのデザインを手がけた08sircus(08サーカス)の森下公則氏。

シンプルでミニマル、そして上質なアイテムたちは国内外で高く評価されている。
パリでのコレクション発表を経て感じる日本のファッションの今や今後のブランドの展望について話を伺った。

ブランドネームの“サーカス”は自分の理想のブランドイメージ

森下さんはアパレルメーカーの企画のご出身でしたね。
そこから、独立してブランドを立ち上げるまでの経緯・背景を教えてください。

「理由は色々ありますが・・・やっぱり、何かに沿ってというわけではなくて、自分自身の考えでデザインしていきたかったというのが大きいです。」

前身のブランドでは、洋服の加工をブラッシュアップしていたという印象があるのですが、それとは対照的に08sircusではどちらかというと、クリーンでシンプルなデザインだと感じます。
そこに関して、ご自身のデザインへのこだわりに変化があったのでしょうか。

単純に飽きちゃった、というのがあるんでしょうね。デザインの変化に関してはあまり深い意味はないんです。
実は、前ブランドでも加工にこだわりをもっていたというのも深い意味はなくて。
自分の気分でデザインは変わっていきます。時代性という部分もふまえてですが。

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08sircusというブランドネームもインパクトがあると感じましたが、由来や名づけの背景は何でしょうか。
どこのブランドでも言えることだとは思いますが、ブランドネームって重要で、それなりに考えて決めています。
“サーカス”って自分にとっては楽しいものである反面、シュールですこし怖い、でもわくわくする・・・という、人によってイメージが全然違う、捉えどころがないものだなと思っていて。でも、観客からは期待されている、みたいな。
それが自分の創りたいブランドのイメージと重なるかなと。
語感も気にしていて、「サーカス」って言葉の響きもクリーンでかわいらしい印象だなと思ったというのもあります。
あとはお客様に敬意を払って、イギリスの叙勲制度の称号のサー(Sir)+カス(customer)という意味もかけていたり。

様々な意味を持たせていたんですね。ちなみに“08”というのは・・・?
前身ブランド・キミノリモリシタをやっていた時に蜂のマークをつけていたんです。それを継承するなにかがないかなって。だから“08”です。

素材の開発とリスクは表裏一体。それでもやっぱり新しいものを生み出したい。

デザインに関してお聞きします。シーズン毎に何かテーマを設けているんですか?こういった感じにしよう、という方針というか。また、インスピレーション源がどこかにあったりするのでしょうか。
インスピレーション源に関しては、あったりなかったり・・・という感じですね。
最近は明確にこれ、というのはなしで進めることが多いです。ショー形式で発表するときは、多くのスタッフが関わるのでテーマを設けたほうがやりやすいというのはありますが。

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ここ数年、レディースのコレクションも発表されていますね。レディースのコレクションを始めたきっかけや、メンズとのデザイン面での違いを教えてください。
レディースに関しては、逆にやっていないほうが不自然だなと思うところがあったんです。
自分自身、テーラードが中心のメンズ服の専門学校を卒業して、ずっとメンズ一本でやっていたんですが、そのうちに空白というか・・・虚無感を感じることがあって。
でも、スキルにしても経歴にしても、レディース分野では何もないので、今まで手を付けづらかったんです。そんな中で、今の会社で徐々に環境も変わり、自然発生的に始めたという感じですね。どうやったらいいのかな、という部分はまだありますが、逆にまったく知らない自分だからこそできることも結果的にはあると思っています。

メンズとレディースでは、デザインもお客様も違うとは思うんですが・・・ブランドの運営的な部分で差をつけていたりはしますか?
正直、そこがまだ悩んでいる部分です。レディース単体で構えてしまうと、まったく別のブランドになってしまうし、かといってメンズの相方としてのレディースにすると辻褄が合わないことも出てくるし。
レディースとメンズのベストな関係性を見つけるということが今後の課題ですね。

レディース、メンズと共通して08sircusは素材やパターンが素晴らしいと感じますが、やはり素材開発にこだわりはありますか?
はい。タイムスケジュールで一番最初に動き始める部分としては、実はデザインとかコンセプト以前に素材開発の部分だったりします。どんな生地を使うか組み立てていくのと同時進行で、デザインもしていくという感じ。
一発で素材が決定するということはなかなかなくて、失敗して納期が遅れるといったことも・・・
開発とリスクって表裏一体で、やっぱり新しいことをしないと新しいものは生まれないんです。
やりすぎるとビジネスとしては失敗してしまうんですが、それでもデザイナーである以上、どうしても新しいものを見たいので、ついつい手を出してしまうんですよね(笑)

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素材やデザインに関して、マーケティングをして決定をされることも?
マーケティングってやったことないです。結局は自分が発信したいデザインをしているので、むしろ雑誌なんかはあまり見ないようにしています。でも、パリでの展示会のタイミングでリサーチという名目で高感度なショップを見て回ることはあります。そうすると、自分のブランドの商品が他はどんなブランドと並んでいるか、他のブランドはどんな生地を使っているのか・・・なんかをチェックします。

日本は実はトレンドの移り変わりに一番敏感な国

展示会等でパリをはじめ、海外に行く機会も多いかと思いますが、日本と海外のファッションの違いは感じますか?
感性だったり、服のクオリティの面も含めて。

日本人の服って、価値観がユニークだったり、いわゆる“まじめ”っていうのがキーワードだったりするんですが、基本的に海外の人って服はセクシーじゃないとダメなんですよ。いま、ビックシルエットが流行っているのが珍しいくらい。海外のバイヤーの方にも『服のシルエットにくびれがなくなると一般のお客様が着なくなるので、そこはキープしてほしい』と言われたことがあります。やっぱり、男に対しての女、女に対しての男、自分の好きな対象に対して、どう着飾るかっていうのがヨーロッパの基本スタンスじゃないかと。
あと、服はステータスを表すという側面もあって、東京とか日本のようにヤング層からシニア層までの色々なレベルの色々な価値観の服が揃っている国って日本しかないんです。

5海外だと、安い服かハイブランドか大体どちらか。ハイブランドを現地で買う人はハイクラスな人々、そうじゃない人は手を出さない。半面、日本はハイブランドの服も買うし、かつファストファッションも買う。そこも特徴的ですね。
日本には世界中からいろいろなブランドの服が集まってきて、不景気だと言いながらも世界のどこよりも洋服が売れている。そんな中で切磋琢磨しているので、日本のデザイナーたちはファッションの世界の中でも本当に凄いと思うんです。でも、世界の基準というのを判断する人達の美意識や価値観が日本のデザイナーがつくるものとちょっとずれている。ユニークだったり、まじめだったりするということと、ファッションにおける美を判断する人びとにとって根底にある“新しいもの”というのに違いがある。

08sircusが海外で好調な理由は何だと思いますか?
何でしょう。よくわからない、というのが正直なところですが、日本のブランドが海外に展開して、向こうの人たちに受け入れられるのはかなりハードルが高いことだと思います。だからこそ、“よそにはないもの”というのがキーワードになるんじゃないかな。でも、日本と海外ではウケるものが違うので、またそこが難しいところです。

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国内、海外とで展開する商品を分けるということはありますか?
昔は海外でも日本でもほぼ同じ物を出していました。でも、今は08sircusの様なシンプルなデザインのブランドは海外にもたくさんある。その中で、どう自分のブランドを伝えられるか?というのが重要だと感じていて。そこは変化を持たせなければいけないなと考えています。

今後の展望とは。
キミノリモリシタを実は今回、ヨーロッパで発表したんです。値段面も考慮して、海外のマーケットに関しては、キミノリモリシタを再出発して、既存の海外と日本のショップに関しては今のまま08sircusを・・・という感じで分けていかないとと思って。いずれは、キミノリモリシタも国内で販売したいとは思っているんですけどね。

最後に、UNITED TOKYOとコラボレーションしたオーバーコートについて、デザインのポイントを教えてください。
実は、このオーバーコートはもとはレディースの型なんです。
レディースでは、“シンプルで強い服”というのをやっていきたくて。派手ではないけど、存在感がある服というか。
あとは、いい意味でのアンバランスさというのは意識しています。
そこで、試行錯誤を重ね、微修正をしていくうちに、肩の落ちたボリューム感を持ったコートになりました。

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DESIGNERS profile
森下公則
1964年生まれ。アパレルメーカー在職中2002年春夏より「kiminori morishita」をスタート。パリコレクションに参加し世界70店舗のセレクトショップで販売され、一時代を築く。2009年に独立し「08sircus」を立ち上げ、2012年自身初となるウィメンズの展開をスタートする。

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